イルカの主

残虐公ルイの統治(1110〜1145)

1110年秋、新しいドルフィン公が誕生した。
先代レオンの長男ルイがドルフィン公となったのである。このときルイは43歳になっていた。
しかし、ベルン伯時代のこともあってか民衆からはもちろん教会からも嫌われていたのである。

そのため、この新しい公爵は父の統治を模範として最初に新しい重臣の選定を行った
結果、重臣は以下の通りとなった。

司令官　マルティン(フィリップの長男)戦闘９
大臣　ハンベルト(フィリップの次男)政務14
外交官　ティブルゲ(妻)外交14
隠密　ジョフリー(弟)智謀９
宮廷司祭　トマス・フィリップ(フィリップの三男)

この選定は弟であるフィリップの人気にあやかろうとしたものといわれている。

さらに、長男シャルルにノーフォーク公の娘である後妻セリーヌとの間に次男ピピンが生まれた。

しかし、喜びもつかの間であった。そのシャルルは病の床に倒れそのまま帰らぬ人となったのである。
このため、シャルルの次男ピピンとセリーヌの腹の中にいる子はノーフォークへと連れて行かれてしまった。

そしてその一年後、ルイはベルン伯に弟のフィリップを、
テラゴナ伯に弟のトマスを選定し、その統治に当たらせた。

これは、ルイのブルゴーニュ王国の構想として４公国体制を模索しており、
そこから来たものである。つまり、ブルゴーニュ王国の範囲はちょうど、
ドルフィン公、プロヴァンス公、サヴォイ公、シュバイツ公の４つから成立すると考えたのである。
つまり、弟であるフィリップの一門にシュバイツ公の地位を約束したものだった。

その一方で弟のトマスをカタロニアのテラゴナに置くことは、イベリアのムスリム諸侯に対する
対決姿勢を崩さないためのものであった。

即位して２年目、領内で伝染病が流行し、司祭トマス・フィリップの息子である
マウグスとミロンが相次いで他界したのである。
この原因は若くしてこの世を去ったシャルルの亡霊の仕業ではないかと領内で噂された。
その為、ルイはドルフィンに教会を建て亡霊を鎮めようとした。

1115年、シャルルの亡霊が消えたのかトマス・フィリップに三男が誕生した。
その子はジーンと名づけられたがしかし、３年前に亡くなった２人と比べると
お世辞にも有能とは言えなかった。

1117年、ルイは北アフリカで孤立しているムスリムのオラニア太守を攻撃することにした。
この戦争で多くのムスリムが惨殺されたことから、ルイは残虐公の異名をとった。

その結果オラニアを自国領として、弟ジョフリーをオラニア伯に置いた。
後継の隠密に次女のマティルダを任命した。その後、マティルダを司令官マルティンの妻とした。
これは明らかな政略結婚であったが、家臣団の中から文句を言うものはいなかった。

1118年、５０歳を超えたルイに思いもよらぬ出来事が起きた。妻が男児を出産したというのだ。
ルイは自分とは孫ほどの年の差を持つこの子にアンドレと名付け、溺愛した。
だが家臣団、特にベルン伯のフィリップはこの出来事が後の憂いとならないことを祈った。

1121年、ルイは新君主が即位したばかりのプロヴァンス公国を併合することを決めた。
計画はサヴォイを領有しているサヴォイ伯を潰し、
その後にプロヴァンス公とフォルカルフィエ司教を同時に潰す計画を立てた。

その矢先、事態は思いも寄らぬ方向へと動いた。
なんとサヴォイ伯がプロヴァンス公から独立し、そのままロンバルディア公の配下となったのである。
先を読んだかのようなこの動きにルイは動揺したが、プロヴァンス公とフォルカルフィエ司教に宣戦布告をした。

司令官マルティン率いるドルフィン兵はフォルカルフィエに、ルイ率いるベナイシン兵はプロヴァンスに進軍した。
残りのヴィヴィエル伯領は同盟相手のためプロヴァンス公国崩壊後の独立を約束した。

しかし、残虐公ルイの事を恐れたヴィヴィエル伯に同盟を反故されてしまう。
その為ベルン伯のフィリップに挙兵要請をし、ヴィヴィエル伯軍の撃退に当てた。
プロヴァンス公国も全力を挙げて防戦するも、兵の質・量ともにドルフィンに及ぶものではなかった。

この結果、フォルカルフィエ、プロヴァンス、ヴィヴィエルの３領を一気に併合し、
かつての領主国プロヴァンス公国を滅亡させた。

1121.GIF

1122年、ルイにローマ教皇から破門を宣言された。
理由としてフォルカルフィエ司教領の占領とプロヴァンス公国での虐殺行為とされていた。
現ローマ教皇はプロヴァンス公と縁のあるアイルランドのレンスター公の一族で、
明らかに不条理ではあったが相手は教皇であるため、我慢することにした。

プロヴァンスとの戦争後、兵の数は戦争前の６割にまで落ちており、
この状況で他国との戦争は自殺行為である。
その為ルイは、仮想敵国の１つであったジェノヴァ共和国と同盟を結んだ。

オラニア伯であった弟ジョフリーがこの年死去した。
宮廷でしめやかに式が挙げられる一方、オラニア伯の後継問題がひそかに話し合われてた。
その理由としてジョフリーには妻はいたが先立たれた上、子供が一人もいなかったのである。

後継候補として上がったのがルイの孫のゴーシュとピピン、そしてルイの末子であるアンドレであった。
家臣団はアンドレを後継にするべきとしたが、ルイは耳を貸さなかった。
ピピンに関しては、数年前から狂人となっていたため却下され、結局ゴーシュがオラニア伯となった。

1123年、孫のゴーシュに長女が誕生し、エリーズと名づけられた。ルイにとってはじめての曾孫である。

この喜びもつかのま、ルイに凶報がとどいた。
突然、オラニア伯のゴーシュが独断でバレンシア太守に戦争を仕掛けたのである。
ルイは援軍を出すことはしなかった。いや、正確に言うと出せなかった。
だが、テラゴナ伯のトマスはこれに乗じたため、ドルフィン公国は初めて負け戦を経験した。

この結果、北アフリカのオラニア、イベリア半島のテラゴナの２つの領土を失う結果となった。

1125年ゴーシュに待望の長男が誕生する。名前はレンドルと名付けられた。
ルイはこれで後継者が安泰と喜んだ。
1126年には次男マウグス、1128年には三男ガラフリーが生まれた。

しかし、この頃にこの世を去るものが相次いで出た。
1126年には宮廷司祭であったトマス・フィリップが宮廷司祭の後釜がいない状況でこの世を去り、
1127年には妻であり、優秀な外交官であったティブルゲが亡くなった。
さらには1130年には優秀な指揮官であったマルティンとゴーシュの三男ガラフリーもこの世を去った。

ベルン伯のフィリップは子供が２人も立て続けに亡くなった事で悲しみに伏せる事となる。
だが翌年、そんなフィリップに吉報が訪れた。次男のハンベルトに息子が誕生したのである。
ハンベルトがこの子を自分の父親と同じフィリップの名を与えたことにフィリップは喜び、
悲しみからベルン伯の職務に復帰をした。

1135年ベルン伯のフィリップが65歳で病に倒れこの世を去った。
レオン、ルイの２代においてこの国の重鎮であった彼がなくなったことは大きな痛手であった。
ベルン伯は彼の次男であるハンベルトが後を継いだ。

この国の調停役を果たしてきた彼が死んだことで、宮廷内で争いを止めるだけの力を持った者がいなくなった。

特に、ルイとフィリップの孫であるジーンの争いはすさまじいものがあった。
ルイはフィリップの顔を立てるために彼に対して我慢を重ねていたが、
ドルフィン伯の位をよこせといわれ遂に我慢の限界まで来ていた。

どうにかして彼を一族から追放しようとしていたところ、スコットランド王国から救援要請が来たのである。
戦争相手はグラスコーを支配するベルウィック公であった。
直ちにゴーシュとベナイシン兵を派遣し２ヶ月で片をつけ、スコットランド王国に彼らの領土を譲った。

1137年ルイはロンバルディア公国と一戦を交えた。
彼らの領主である神聖ローマ帝国とその同盟国のフランス王国が攻めてくるも、両方とも何とか撃退することに成功する。

この戦で、フランスから3000を超える賠償金を、
神聖ローマ帝国からドルフィン公国内のクレームを全てはずすことを、
ロンバルディア公国からはサルレスを獲得した。
だが、フランス国内で徐々に頭角を見せ始めたトゥールーズ公国がドルフィン公国内の
全領土にクレームをつけた。
これにはルイも怒りが収まらなかったが、戦争が終わったばかりで兵の数も激減していた為、無視した。

1138年唯一兄弟で生きていた弟のトマスが死去する。
彼には娘しかいなかった。全員嫁に行っていたため、彼の一門は断絶することとなった。

さらに、ベルン伯のハンベルトも急死した。これは彼の甥であるジーンが暗殺したとの噂が流れた。
後継には遺児であるフィリップが７歳にしてベルン伯に即位することとなった。
ジーンはルイに対して大臣の地位を要求したため、彼の一族もろともフランドルに追放された。

1145年ルイは78歳となったこの年、病の床に伏せる。
その病の床の中で驚く物を見た。なんと曾孫のマウグスに男児が生まれたのである。
彼にとって最初の玄孫であるこの子はクレメントと名付けられた。

その数ヶ月後、
残虐公としてムスリムからもクルセイダーからも恐れられたドルフィン公ルイは帰らぬ人となった。

彼は恐れられたと同時にヨーロッパでドルフィン公国を知らない人はいないほど有名にしたため、
国内では勝利公と呼ばれることもあった。

後継問題で家臣団は大揺れとなったが、
ヴィヴィエル伯のアンドレがブルゴーニュ王国が出来た際に、
彼の一門からプロヴァンス公を出すという条件のもとで後継候補から辞退した。
そのため、後継者は司令官であり彼の亡き長男シャルルの子であるゴーシュが跡を継ぐこととなった。

ドルフィン家系図1145.GIF
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