プレイレポ/カフカスに福音を(マヌィチ伯 マニク家)

北アフリカ十字軍

聖地エルサレムの奪還失敗、イベリア半島のレコンキスタの敗北と、
十字軍戦士たちにははなはだ意気の上がらない時代であったこの時期、
北アフリカではカトリック勢が健闘していた。
主役となったのは、国の分裂にあえぐイギリスやドイツではなく、
国内の安定していたデンマークとハンガリーである。

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エジプトの戦況。デンマークがナイル流域を押さえる

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チュニジアの戦況。ハンガリーがズィール王を破る

海軍国であったデンマークはロングシップを仕立て、はるばる遠征をしたが、
ハンガリーは大国ではあっても内陸国である。
多くの兵をアフリカまで運ぶのに、イタリア商人あたりがさぞかし儲けたに違いない。

封臣になったヴェネツィア人から現実主義を輸入したのかと思われるほど、
マニク家の治めるクロアチアは聖地奪還には冷淡であったが、
これらカトリック勢の動きは、若き王に影響を及ぼさずにはおかなかったのである。

 

 8代 聖アスクカダル(アスクカダル2世,1218-1260)

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マニク家系図。第6代からアスクカダルの息子たちまで

祖父であるアゾフ伯のクルがクロアチアより独立して、数十年。
クルも、その息子であるテンギズも、王位とは縁のない生活をしていた。
アスクカダルも、地元の娘と火遊びの末に庶子グリゴルをもうけるなど、
地方貴族の生活を満喫していたのである。

しかし、母方の縁でルーシの地方領主となって以降、この生き方が激変する。
見知らぬ廷臣たちに囲まれる孤独な境遇の中、アスクカダルは信仰に目覚めるのである。
森の隠者に会ったとか泉の聖女に出会ったとか、様々な逸話が伝えられるが
真相は定かではない。
ただ、過去に罪を犯したというその意識が、深い信仰心へと昇華した様である。
穏やかなビターゼを継いでアラニアの都に現れたのは、
真面目な、少し影を背負った様な青年であった。

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アスクカダル即位直後のクロアチアの信仰地図。白がカトリック

王位に就いたアスクカダルは、ちょうど同時期に前任者の死で空席となっていた
教区長を自らが兼ねるという形で、一つの宣言をしたのである。
それは、王である自分が国内の宗教上の問題の責任者となるという事であり、
これまでは教区長というクッションが介在していた宗教問題に、
王が直接、介入するという事でもあった。
そしてアスクカダルは、この問題に一切の妥協を許さない覚悟で臨んだのである。

王位継承の後につきものの幾つかの反乱や独立を収拾した1224年、
先王の時代に獲得した異教の地ガラスで反乱が勃発。
アスクカダルは軍を派遣し、これを鎮圧。
これをきっかけにして、国内のカトリック以外の信仰を持つ者への、徹底的な弾圧が始まった。

1225年 イメレティアで大規模な改宗が発生。
弾圧の烈しさは、この地の文化をアラン人のものに変えるほどであった。

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イメレティアの改宗

1226年 ガラスがカトリックに改宗。
同年、小アジアの付け根にあたるトラペズスもカトリックに改宗した。

1230年 異端の信仰が広まっていたアゾフの伯として、法王庁派遣の聖職者
スッダン・ザカタラを任命。どの様な手段を用いても異端を根絶するよう、厳命が下された。

狂信的に信仰の戦いを進めるアスクカダルの姿勢は、一人の廷臣の立場を微妙なものにしていた。
アスクカダルの庶子、グリゴルである。
かつての「罪の証」が宮廷にあることを、快く思わない家臣が多かったとしても不思議ではない。
立場の無いグリゴルはこの時期、宮廷を出奔し、
異教徒であるカソグス支族に寝返ったりしている。
しかしこの地でも歓迎されなかったのか、しばらくして出戻った様である。
よくぞ暗殺者を差し向けられなかったと思えるが、
アスクカダルも親子の情の様なものを幾ばくかは感じていたのかも知れない。

1234年 旧グルジア領であるアブハジアで宗教対立が激化。
聖職者たちにより改宗が試みられたが、これは失敗に終わった。
異教徒の改宗よりも、基を同じくする正教徒の改宗の方が難事であった様である。

1237年 クマン族の支配下にあったクバン支族が独立。
アスクカダルはこれに宣戦したが、新たに君主となっていたカヤンボルク部族とも争いになった。
だがカヤンボルク部族は、遠くフィンランドの地にある勢力である。
クバン支族を滅ぼした後、適当な時期に和が結ばれた。

即位から20年、国内の宗教的な戦いに明け暮れたアスクカダルであったが、
それも許されない時が来る。
東方より、モンゴル人たちが来襲したのである。
それは、多くの国を巻き込んだ戦乱の始まりでもあった。

 

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