それでは歌おう
オークニーのアーランド=トルフィンソンのこと
父はトルフィン=シグルダルソン
剛力名高きオークニーのヤール
オーガの血を引き、背丈は3ヤード
あまたのいくさで血を浴び、勝った
知略をめぐらせ、オークニーの大ヤールとしてノルド人の王に
ケイスネスのヤールとしてゲール人の王に仕えた
母はインガボーグ=フィンスドッティル
聖王オーラヴの姪にあたる貴婦人
先のノルウェー王ハーラル・ハルドラダの宮廷で育った
人呼んでハランドの花
トルフィンの死後、インガボーグはダンファームリンへ行った
マクベスを下したゲール人の王、マルカムの妃に迎えられて
残されたのは二人の子
兄アーランド=トルフィンソン
弟ポール=トルフィンソン
兄はケイスネスの、弟はオークニーのヤールとなった
イングランドのエドワード懺悔王が死に
王ハーラル・ハルドラダの艦隊がイングランドへ押しよせたとき
ともに二人は戦った
ヨークシャーの海岸で
とある橋でハーラル・ハルドラダが殺されたあと
二人は王子オーラヴを連れてオークニーへ逃げ出した
それからオーラヴはオスロに帰り
立派なノルウェー王になった
ノルマンディーのウィリアムも、デンマークのスヴェンもオーラヴを認め、
かくしてノルドに平和が訪れた
さて
アーランド=トルフィンソンの領国ケイスネス
ブリタンニアの北の端
ノルド人とゲール人が交わるところ
アーランド=トルフィンソンは魔性のものに出会った
クロウベリーの繁る丘の上
魔性のものは言った
「アーランド=トルフィンソン、あたりを見渡すがよい」
丘の上から見渡せば
驚くばかりの千里眼
北はオークニーとシェトランド
東は海ひとつ越えて王都オスロまで見えた
南にはゲール人の王国とノルマン人の王国
西にはゲール人の島々、アイルランド、マン、西方諸島
もっと西にはなにもない
「おまえの子孫をこれら島々の王にしてやろう」
そう言うと魔性のものはかき消えた
クロウベリーの繁る丘の上
アーランド=トルフィンソンは息子たちを島々の宮廷にばらまいた
多くの友人を得られるように
ハルケルは王オーラヴ=ハーラルソンの城へ
庶子アーランド=アーランドソンは弟ポールの館
トーレは西方諸島のヤール、白き手のグドレード=ハーラルソンに
グリムはゲール人の王マルカムに預けた
けれどハルケルは阿呆に育った
アーランド=アーランドソンは庶子ゆえ宝の持ち腐れ
トーレは杓子定規のつまらぬ男に
グリムは男子がいなかった
アーランド=トルフィンソンは考えた
ハルケルやトーレに後を継がせられぬ
それで庶子アーランド=アーランドソンを我が子と認めた
宮廷は大騒ぎ
アーランド=トルフィンソンはハルケルを追い出した
阿呆のくせに家令になりたがったので
ハルケルはイングランドで死んだ
継承順を譲らなかったので
それからアーランド=トルフィンソンも死んだ
寿命いっぱいまで生きて死んだ
剣を抱いて静かに横たわった
クロウベリーの繁る丘の上
ケイスネスのヤール
アーランド=トルフィンソンの歌はこれでおしまい
アーランド=アーランドソンのこと